サーボーンという習慣

(地方島にて。サーボーンはここで。)
ダイビング、ビーチリゾートといった観光地としてはあまりにも有名なモルディブも、
現地の人々の暮らしぶりはほとんど知られていないのではないだろうか。
政府の考え方ということになるのだろうが、
観光客が訪れる「リゾート島」は、
一つのリゾート企業が経営するホテル(たいがいコテージ群)だけしかなく、
従業員以外はモルディブ人不在。
対して、現地モルディブ人の住む「地方島 」は素朴な漁村であり、観光客はゼロ。
理由は、これらが「島」であり離れているからというだけでなく、
お互いの行き来が法的に禁止されているからである。
ということで、住んでみなければなかなか分からないモルディブ人の習慣「サーボーン」の話。
いつもの出来事
配属先のユースセンター、朝から仕事して一段落の10時頃、
スタッフのラーミズが僕に声をかける。
「サー・ボーン・ダニー・タ?(お茶しに行く?)」
ディベヒ語(モルディブの現地語)はシンプルである。日本語に語順・構文とも極めて近く、
サー(お茶)、
ボーン(飲む、の原型)
ダニー(行く、の未来型)
タ(疑問型に変える、日本語の、縲怩ゥ?)
僕はほとんど自動的に答える。
「ダニー」(行くよ)
ここで、「ヌダニー(行かない)」と言おうものなら、話はややこしくなっていく。
「エイ、キーベ(なに、なんでだ)」
サーボーンは午前午後、毎日2回はする「習慣」で、誘われたら「行く」ものだ。断っちゃいかん。
モルディブ人はサーボーンで人間関係を保っている、と言っても過言ではない。
首都マーレでは配属先から近くの「ホテル」にお茶をしに行った。「ホテル行こうよ」と誘うこともある。
ここでホテルとはサーボーンをしたり、食事(カレーのみ)をしたりする、いわば大衆食堂だ。
地方島では、これが各人の家になる。まぁ、おやつタイムみたいなものだ。
自分の家だけではなく、毎日、友達の家を訪れる。
「サー・ボーン・アイー(お茶しに来たよ)」。
で、友達とお茶をしながら何をするのか。これが結構、「何もしなかったりする」。
ただ、来てお茶しているだけなのだ。
「このことにそんなに重要な意味があるのか?」と問いたくもなるのだが、
うっかり行かなかったりすると、翌日、結構まじめに叱られる、
「昨日はなんで来なかったんだ!」
サーボーンで飲み食べするもの
最初はほぼ自動的に「カルサ」で始まる。
カル{ブラック)、サー(ティー)ということでブラックティーの意味であるが、実際には砂糖ドボドボである。
ティーカップにカレースプーン山盛り一杯分の砂糖が入っている感じ。
最初はこれが「ウヒャー」っていう甘さで、
日本人が最初に憶える「サバイバル・ディベヒ」が「ハクル(砂糖)・ナーラ(無し)」と冗談をいうほどだ。
でも半年一年経ち体が慣れてくると、逆に、時に甘みの少ないカルサを出されると
「おい、甘くないぞ!」とクレームをつけるようになる。一つの順応。
カルサに対して「キルサ」はミルクティーである。
ブラックティーがすでに砂糖入りなので、当然甘くないミルクティーは望めないのだが、事態はもっと厳しい。
ミルクはなんとコンデンスミルク! イチゴなんかにかけるやつね。これが、また美味い!
(と、順応しきった僕の感想)
キルサを飲むのはちょっとリッチな気分。
カルサ・0.5ルフィア(約5円)に対し、キルサ・3ルフィア(約30円)だ。
やはりお茶にはお菓子も大切。ヘディカと呼ばれる菓子・ケーキ・パン類が出される。
種類は多く、インドでおなじみサモサやら、ボール状に揚げたツナのフライとか、
「ういろう」みたいなボーキバとか、
見ていて楽しくなるくらい様々な種類があるのだが、困ったことが1つだけ、
全部、カレー味なのだ。あと、基本的にカツオなのだ。
だから、結局みな同じともいえるのであった。
あと、甘いケーキなどもあるのだが、
「これは砂糖の固まりか!(怒)」、というくらい甘くて、そりゃあもう歯にしみるくらい。
帰り際にみな、ドゥファンをする。
ビンロウ(樹)とかいう実をスライスして炒ったものを口に入れてクチャクチャ、一種の嗜好品だ。
何度か試したが、頭はボーっとなるし、口はしびれるし、苦いし、何がいいのか全然分からん!
まぁ、習慣性からいうとタバコに感覚は近いのかしら。
好みによって、ビンロウの葉っぱでくるんだり、さらに石灰をつけたりして食す者もいる。
さらに刺激がアップするらしい・・・。
紅茶の国ならではのエピソード
ある女性協力隊員に聞いた話。
ステイ先の家では、日本人に気を遣ってか時々コーヒーを出してくれたそうだ。
それが、どうもまずい、というか変だ。
そして、ある日、見てしまった、コーヒーを入れる現場を。
ネスカフェをなんと「紅茶で」入れていたらしい。
つまり、ネスカフェ粉末の入ったカップに紅茶を注ぎコーヒーをつくっていたのだ!
確かに、ここじゃ紅茶は水代わりなんだけど・・・

(カルサ)

(サモサ)

(ボーキバ)

(ドゥファン)