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紙一枚出してもらうのに一週間

僕は、モルディブの大統領府ユースセンターで写真コースを担当していた。
モルディブ人は、時間には結構厳しいようで、
約束に10分遅れただけでも「遅い!」などと言われる事もあった。
まぁ、「大都市」マーレでも島の端から端まで2km、
電車が遅れたとか渋滞なんていう理由は使えないし・・・。
しかし、それでも仕事をしていく上では、
やはり「日本人」には理解できないモルディブ人感覚もあったわけで・・・ 

モルディブに赴任して約1年、受け持った始めてのクラスで写真展を開く事になった。
テレビやラジオでも告知するようなイベントなので生徒も僕もはりきって準備をはじめた。
写真の額縁はユースセンターにストックがあることがわかり、
次は写真をマウントする白い厚紙を調達することになった。
すると同僚のガニーが
  「それなら倉庫にあるから心配するな」
と言ってくれ、一安心。しかし大変なのはここからだった。

紙が本当にあるのかどうか、どんな状態なのか、早く知りたかった僕は早速ガニーに頼む。
  僕 「ちょっと紙を見せて」
  ガ 「あとにしてくれ」
  僕 「なんで?」
  ガ 「今は暑い!」
  僕 「じゃぁ、いつならいいんだ?」
  ガ 「夕方4時過ぎに来い、倉庫を空けてやる」
しょうがないなぁ、と思いつつも、しぶしぶ受け入れることにした。で、4時。
一度帰宅して、昼寝も済み、再出勤。しかし、今度は肝心のガニーがいない。1時間待っても来ない。
まぁ、なんかの行き違いだろうとあきらめて帰った。
そして翌日、約束を忘れていたというガニーを許す事にして改めて申し入れ。
  僕 「倉庫から紙出してくれる?」
  ガ 「まだ暑いからダメだ」
  僕 「モルディブが暑いのは仕方ないだろう、開けてくれよ」
  ガ 「ダメだ、夕方4時に来い!」
昨日しくじった割にはやけに強気だなぁ、と思いつつも再度受け入れた。
そして彼はまたもやって来なかった・・・。
さすがに僕も我慢の限界になった。翌日、強く言った。
  僕 「今日は出してくれよ」
ところが、彼の答えはまたしても「ノー」。
  僕 「じゃぁ、俺が見てくる、鍵を貸してくれ」
  ガ 「それはできない」
  僕 「なぜ?」
  ガ 「倉庫の責任者はこのガニーだ。鍵は渡せない」
  僕 「じゃ、今開けてよ、中には僕が入る」
  ガ 「それもできない、中に入るのは俺だ」
  僕 「じゃ、いつなら中に入れるんだ」
  ガ 「夕方だ、それまで待ってくれ」
信じがたい頑固者!
この日は夕方僕の都合がつかなかったり、その後もなかなか二人の都合が合わず、
1枚の紙を手にするのに結局1週間かかってしまった。
紙があるかどうかちょっとチェックするのに1週間!

こういう経験から何かを学んでいくべきだったのだろうけど、
当時29歳の僕はそこまでのゆとりがなかったわけで・・・