世界の暗室!

(モルディブ青年センターの暗室)
僕は青年海外協力隊員として、モルディブとガーナで計3年の写真指導をした。
経済的に豊かとはいえないということでモノクロ写真をベースにしての指導であったので、
暗室に入る時間が長かった。
で、 暗室にもお国柄があった! というお話を・・・。
まずは日本の場合
といっても大学の研究室の暗室くらいしか経験がないのだが、
やはり日本であるので、暗室であるべき最低限の条件を大抵は満たしているはずだ。
つまり、「暗黒であること」、「水道が整備され、流しも使いやすくなっている」などだ。
そして、経験の範囲で言わせてもらえば暗室は孤独な世界だ。
暗室作業をしていると、自分がクリエイターであるという意識が出てきて
結構集中も高まり、夜中一人での作業に向いていたりする。
さらに大学生あたりで写真をやっている奴なんてオタクっぽいのが多く(偏見かな)
まぁ、静かな世界だった気がする。
モルディブの場合
活動したのは1991年から1993年の2年間、大統領府青年センターの写真コースで講師を務めた。
モルディブの暗室で最も特徴的だったのは「水をあまり使えない」ことだった。
なにしろ、水道がなく、井戸水か雨水しか水が手に入らないところに、
フィルム現像や印画紙の水洗にモルディブのしょっぱい井戸水など使えるはずもなく、
当国ではベストと思われる雨水をあてた。
雨水タンクなどからバケツに汲んできた水を、それはそれは大事に使った。
なにしろ雨水といえばモルディブでは「飲用にしか使わない」ほどの貴重なもの。
なんかこそこそと暗室を使っていたような気がする。
驚いたのは、コースの生徒を募集するときにスタッフから「女性はダメ」といわれた事だ。
婚前の男女が町を歩くだけでも噂が立つモルディブ。
暗室に男女で入るなどもってのほかなのだ。で、僕が男だから、女生徒はダメだって!
つまんないねぇ。
実際こんなことがあった。
僕が一人で暗室作業中の時のこと、
青年センター・女性スタッフのズフラが暗室に入って世間話をしていったことがあった。
案の定、翌日、上司に呼び出された。
「お前、昨日女と暗室にこもったな、俺が通報したら逮捕されるぞ。今後気をつけろ 」
気をつけろってどうするんですか? の問いには、
「少し隙間を開けておけばいいじゃないか」
・・・・
ガーナの場合
ガーナでは国立テマ技術専門学校写真学科の専任講師を務めた。
西アフリカでは唯一の写真学科とか何とか聞いたような気がしたが・・・
最初はなぜだかわからなかった。写真の仕上がりがなんか変なのだ。
白黒のメリハリが利かないなぁという印象。調べてみると、印画紙の白地が真っ白ではない。
これは処理中または処理前の印画紙に光があたっているからじゃないのか。
でもどこで・・・。なかなか分からなかった。でも生徒のプリントも変だし。
あっ、もしや・・・
暗室に入って扉を閉めた。目が慣れたところで天井を眺める。
あった、あった。白い点がポツポツと・・・。
つまりアフリカの強い陽射しが天井や壁の小さな穴や隙間から漏れ入ってきていたのだ。
暗室じゃないじゃん!
それにしてもプラネタリウムみたいだったなぁ。
もうひとつ、ガーナの暗室といえば、やかましい!
いつも歌って踊って大騒ぎで、とにかくにぎやか。
現像タンクをひっくり返しながら中の現像液を攪拌するにもリズムをとって踊りだす。
それじゃ攪拌効率が変わっちゃって粒子荒れちゃうなぁ、なんて僕の声は遠く届かず・・・。
おまけにモンゴルの場合
大学院生時代、友人にモンゴルからの留学生ドルジデレブ君がいた。
家に帰るときは、首都ウランバートルからさらに飛行機乗り継ぎ2本、
最後は、家が遊牧をしているので探して歩くという。
そんな彼もモンゴルで写真が趣味だったそうだ。
「でも現像なんかどうやっていたの?」
「暗室なんかないんじゃないの」
の僕の質問は愚。
彼の答えは
「現像は新月の晩に屋外でやるんだよ。それが一番暗い!」
参りましたぁ。